言葉のニュアンスが人によるからこそ、定義を意識して伝える【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
幅広く、お子様から職業人のみなさんまで、人材育成のためのお仕事をさせていただいています。

先日、ある企業の社長さんが「一生懸命に話しているつもりなのに、どうも自分の意識や考えが伝わっていないように思う。」とおっしゃっていました。私はその社長さんが会社でどういうことをおっしゃっているのか存じていないのすが、「ひょっとしたら」ということでひとつのアドバイスをさせていただきました。

同じ言葉でも受け取るニュアンスが人によって異なる

それは、同じ言葉を使ったとしても、その言葉に対して受け取るニュアンスが人によって異なる場合がある、ということです。

たとえば、「うちの会社、ピンチだね。」とAさんが言ったとします。Bさんはそれを聞いて、「会社が倒産の危機!どうにかしなきゃ!」と慌てふためくかもしれません。でも、実はAさんが言った「ピンチ」とは、今月の営業成績がライバル会社に負ける可能性が大きいということでした。だから、倒産するほどの危機ではないけれど、「ピンチ」という言葉を使ったということ。

同じ「ピンチ」という言葉を使っているのですが、どのていどの危機が訪れているのか、言葉から受け取る二人のニュアンスが異なるので理解や意識にズレが生じてしまっています。こういうふうに、言葉のニュアンスのズレが意識のズレになってしまうことは意外と多いように思います。

言葉で伝えるなら言葉を大切に

社長がスタッフになにかのメッセージを伝える方法はいろいろあります。実は就業規則などのルールによってもメッセージを伝えられます。でも、ふだん、一番に多いのはやっぱり言葉によるメッセージだと思います。会社の理念、会社をとりまく状況、従業員にどうあってほしいか、などなど、いろいろなメッセージを言葉で発します。

我々、人間は、メッセージを言葉で伝えるとき、同じ言語体系の人どうしならきちんと伝わると勘違いをしがちです。分かってもらえないときにもどかしくて「なぜ分かってくれないの!?」と思うのは、分かってもらえるものだと思いこんでいるからです。でも、それがなかなかそうはいかないから言葉を丁寧にあつかい、ニュアンスレベルで整えていく必要があります。

社長からのメッセージでは言葉の定義を共有する

業界によって、会社によって、文化がちがうので、そこも言葉のニュアンスがズレてしまう要因になります。他業界から転職した人が、ある言葉の意味が思っていたのと違ってとまどうという話はしばしば聞きます。個人レベルでは生活環境などのプライベートな要因も言葉に持つイメージに影響するでしょう。

だから、社長からのメッセージは、その言葉のニュアンスが聞いているスタッフと同じかどうか注意しましょう。できれば、当たり前のように使っている言葉こそ、その定義をしっかり明確にして、定義や意味を共有して、それからメッセージ中の言葉として使ってください。ちょっと面倒な作業になるかもしれませんが、勘違いしたまま進むより良いと思います。

 


 


無駄を無駄だとスタッフは気づかないかもしれない【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
前回の投稿では、「人が足りない!」と感じたときに、もしかしたら仕事の無駄を削ったら人材不足が解消するかもしれない、というようなお話をさせていただきました。では、この、仕事の中にある無駄を従業員=スタッフは分かっているのでしょうか。

みんな一生懸命に働いている

不真面目で怠惰なスタッフが居る場合は実は話が簡単です。その人に指導をし、場合によっては改善が見られないときに辞めてもらうという選択ができます。でも、従業員の一人ひとりが真面目にやっている、あるいは少なくとも個々人の意識としては一生懸命であるときに、無駄があったとしても気づきにくいです。

仮に手待ちの時間帯があってその間の生産がないとします。その場合も、1日とか1週間という全体で真面目に働いているという思いがあれば、やっぱり「自分は一生懸命に真面目にやっている」と感じていると思います。このときの感じ方は、「一生懸命にやっているから無駄などあるはずがない」というものです。これは、無駄があるということがすなわち、自分が悪いことをしているという感覚になるからかもしれませんね。

無駄の把握は淡々と、人を悪者にせずに

「無駄」という言葉に対して、その対象となる人を悪く言うという感覚を持ってしまうのは仕方のないことだと思います。でも、無駄の把握はやっぱり必要です。だから、「あなたの仕事にこういう無駄がある」という指摘にならないように注意するのが良いです。

たとえば、「時間あたりの生産性を向上させたい」とか「手待ち時間に価値をつくりたい」とか、なにがしかポジティブな表現を考えます。具体的な言い方については、企業や現場によって変わるから、上記のものはあくまでも一例です。無駄の把握は淡々と客観的に行うべきであり、そこで人が悪者にならないような配慮をしてみましょう。

 

人は、なにか評価の類の言葉に対して感情をどうしても持ってしまいます。こっちが非感情的に、論理的に、客観的にと思っていても、相手がそうとは限りません。むしろ感情を排除するのはなかなかに難しいです。だから、そのことをアタマに置いておいて、どういう伝え方、表現の仕方がよいか考えることが大切なのではないでしょうか。

 


 


人が足りないのか、仕事に無駄があるのか【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
北陸地方は人手不足が顕著で、有効求人倍率も全国平均を上回っているそうです。企業の人事担当さんのニーズとしても人材育成よりも、まず採用を優先するという傾向があるそうです。

人員不足を感じるとき

今いるスタッフで10の仕事をしているとして、そこにプラス2の仕事のオファーがあったら、1.2倍くらいなら残業でなんとかしようとするかもしれません。でも、プラス5、プラス7と増えていきそうに思えたら人員の補充、つまり採用を考えると思います。単純に、人数によってまかなえる仕事量に対して、受注の見込みが大きくなってきたら人員の補充を考えるでしょう。

あるいは、事業の拡大を想定したら、とうぜん今のスタッフでは不足するでしょうから、育成期間のことも考えてあらかじめ人員を増やしておくということも考えられます。この場合は、当面の人員不足というより、未来においては今のままでは不足するという予測からくる対応です。

本当に人が不足しているのか、仕事に無駄はないのか

人員の不足を感じたときに、人材の採用で対応しようとするのは自然なことです。でも、どんなに急いでも人員の充足には週単位、場合によっては月単位の期間が必要です。どうせそれくらいの時間がかかるのなら、その間に、仕事に無駄はないのかという検証をしてみることをお勧めします。

現場でいつも頑張っている自覚のある人は、仕事に無駄がないかと問われると「そんなことありません!」と強く反発するかもしれません。でも、仕事の無駄というのは、その仕事の近くにいる人の「感覚」では測りづらいものなのです。自分自身の感覚では一生懸命にやっているつもりだから無駄なんて考えられない。こういう考えは当然といえば当然です。

仕事の効率性は客観的に数値化する

生産性や効率性については、経営分析の中でいろいろな指標が登場します。そのいずれもが、客観的であり数値化された指標を活用するよう教えてくれます。一人あたりの付加価値の創造度合いや、チーム単位での生産能力など、単位やカテゴリ設定でいろいろ考えられます。

経営の中で人に対する部分は数値で表せない要素もありますが、こと仕事に無駄がないかどうかという部分は、逆にドライに客観的にし考えたほうが良いです。そうしないと、「がんばっているよ!」という非常に感覚的な一言にじゃまをされて正しい状況判断ができません。数値化をする。そのために客観的な方法をとる。

 

仕事の効率や生産性を明確にすることは、最終的には一人ひとりの従業員がゆとりを持って働くことにもつなげられます。別に効率の悪さをあげつらって糾弾するのが目的ではありません。新しい人を採用するとそれなりに現場にも負荷がかかるし、もしかしたら会社全体の人件費割当を考えると既存スタッフの給料にも悪い影響があるかもしれません。

採用を止めるのがいいとまではいえませんが、採用を考えるときに、同時に、仕事の無駄についてもちょっと考えてみてはいかがでしょうか。

社長の視点から、どこまで下に落とした伝達ができるか【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
社長は従業員とは違う視点を持っていて、それはより高いところから俯瞰で見る目のことになります。従業員がこの視点を持つことは極めて難しくて、通常はそのまま説明して分かってもらえるものではありません。だから、あるていどの規模をもった企業の場合は中間管理職があって、この人たちが社長の視点を現場スタッフの視点をつなぐ役割を担います。

零細企業は中間管理職が居ない

形式上のことを除いて、零細企業には「中間」管理職が居ないことが多いです。要らないことが多いというのが正解でしょうか。とにかく社長から末端のスタッフ、従業員までの距離が、物理的にも精神的に近いです。

だから社長から直接に指示を受けることがしょっちゅうだと考えられます。社長の考えを伝えるときも直接のことになるでしょう。基本的には、間に誰かを挟まずに、まさに社長の言葉で思いや指示を伝えることになります。

視点が違うから言葉が通じないことがある

直接の言葉で伝えるなら言いたいことがちゃんと伝わるかというとそうではありません。持っている視点が違ったり、ふだんから考えていることがちがったり、価値観がちがっていたりすると、言葉の定義やニュアンスすら異なり、そのまま伝わらないこともザラです。これは誰が悪いとかではなく、生きている世界が違うから仕方ないことだと思ってください。

下の経験しかないなら上の視点は持てない

視点の違いがあると言葉が通じないことが大いにあるわけですが、片方がもう一方の視点に切り替えることができたら通じるようになるはずです。ところが、被雇用者、つまり会社に雇われて働く従業員スタッフとしての経験しかない人に、経営の視点を持てというのはムリがあります。行ったことがない場所、写真やなにかでも見たことがない場所、そういう場所の風景は想像するしかないように、社長が持っている視点は現場スタッフにとって、せいぜい空想するのがせいいっぱいで不正確なのです。

逆に、経営者の視点を持っている社長が下の視点を持つことは可能でしょうか。これも決して簡単ではありませんが、どちらかというとこっちがまだ可能性があります。なぜならば、社長も現場の経験があるだろうし、かつては末端の従業員であったからです。(まったくそういう経験がない場合は別です)

伝える言葉としての視点を落とす

現場スタッフに社長の考えを伝えるときに、言葉が通じないことが多いと書きました。でも、そのままでいいわけはなく、できるだけ伝わるように工夫や努力をすることも大切です。考えや視点そのものを落とすと社長の役割を果たせなくなるから、伝えるときの言葉えらびとして、下の視点のためのものを考えます。社長が持っている視点での考えや方針や指示を、下の目線から見ても理解や納得ができるようにするわけです。この言葉えらびは作文技術としても簡単ではないかもしれません。でも、あなたが考えていることを有効にスタッフに伝えるために、必要な心構えとして考えていただけると嬉しいです。

 


 


「適材適所」にこだわりすぎない【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
「適材適所」というと基本的にはそれは良いことで、そうするのが良いとされています。けれども、なにごともこだわりすぎると良くないもので、「適材適所」ということもこだわりすぎは良くありません。

部門の設定はあるていど以上の規模むけ

小さな会社であっても役割分担があり、それは、たとえば事務系の仕事であったり販売の仕事であったり、企画、製造、などなど、さまざまです。ただ、会社の中にある役割としての部門、特にその名称をイメージするときに、もともとのそれは大企業むけの設定であり、大企業とは言わないまでもあるていど以上の規模をもった会社に向いているものだと思います。

社長が技術屋さんである零細企業の場合に、営業を担当してくれる人を雇い入れるとします。この人には「営業部長」などという肩書を与えて営業をすべて任せたりするのですが、人数が少ないから営業だけをやっていればいいというわけにはいきません。社長と一緒に企画や製造に関わってもらうかもしれないですし、年度末には事務系の仕事を手伝ってもらうかもしれません。会社の中に必要な機能が部門の設定になっているはずなのですが、必要な機能ごとに部門を設定できるのは全体の規模があってのことなのです。

少人数における適材適所

チームのメンバー数が少ないとき、適材適所といっても限界があります。そのチームの中では比較的に向いているということがあっても、社会全体でみたらそれほど高い能力ではないこともあります。「うちではいちばん数字に強い」という人に経理をやってもらったらミスばかりで、税理士さんに叱られたという話も聞いたことがあります。この場合は、おそらく経理業務を外注したほうが良かったと思います。

また、企業をとりまく環境は常に流動的であり、会社が組織として発揮すべき機能はそのときどきでボリュームが変化します。たとえば販売にグッとチカラを入れたいときには、メンバー全員でそれに当たるのが良いかもしれません。そうすると、事務員として雇用した人にもなんらかの販売的な行動をお願いすることになって「私は事務ですから。」などとは言わせていられないかもしれません。

少人数のチームや組織だと、適材適所といっても社内でそれが賄えないことも多いです。だから、経理業務の例のように外注することを選択肢とするのと同時に、そもそも理想的な適材適所なんて組織内でできないことが多いという前提を覚悟しておくのも必要ではないかと考えます。

役割の自覚を限定化させない

そのときどきでやってもらう仕事や業務に変化がありえるので、部下に対しては、「あなたの仕事はこれね」と限定的には伝えないほうが良いです。「あなたは営業担当ね」と伝えた部下に、業務の関係上でどうしても急ぎの製造を手伝ってもらったら、「私は営業なんだけどな……」と心のどこかに不満を持ってしまう可能性があります。役割の自覚が「営業」という限定されたものになっているからです。仮に労働時間全体に変化がないとしても、「余計な仕事をやらされた」と感じるからです。時間の負荷は変わらないとしても、脳内の意識としてはボリュームが増えています。

だから、零細企業においてスタッフや従業員に持ってもらう「役割の自覚」は、たとえば「新旧顧客のバランスをとりつつ、我が社のサービスで喜んでくれる人を増やす」というように抽象的にするのが良いかもしれません。そのうえで、「いま何をしたらいいか」については社長の方針を明確に示して、常に考えながらやっていくよう促すと良いです。

 

適材適所そのものは悪いことではありません。けれども、部門の考えが一定以上の規模をもった組織むけであり、小さな組織では適材適所そのものが難しい場合もあります。無駄にマイナスな感情を従業員が持ってしまうケースも考えられるので、あまりこだわりすぎないようにしましょう。

 

経営者の感情労働について考える【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
感情労働という言葉があります。昔から言われる「肉体労働」と「頭脳労働」に次ぐ3つめの労働としての比較的あたらしい考え方です。そして、人材育成を考える社長さんに、知っておいていただくと良いのではないかと考えています。

感情労働とは

まず、感情労働とは、感情によってこなしていく仕事といえます。たとえば、カウンセリングとかがそうですが、自分の感情、少なくとも表に見えるものはコントロールしなくてはいけません。そして、表に見える表情やしぐさにおいて職務上で有効でないものを出さないようにするためい、自分の感情そのものもコントロールしたほうがよい仕事ということになります。

感情労働が求められる仕事の種類としては、カウンセラーのほうかに、各種の接客業や講師業、コールセンターのお仕事、士業のお仕事などがあります。他者と接して双方が気分よく事を運ぶ必要があるのなら、けっこういろんな業種が当てはまると思います。たとえば一般事務職のなかにも感情労働はたくさんありそうですし、ITエンジニアも感情労働を求められる場面はけっこうありそうです。

経営者=社長の感情労働

感情をコントロールして相手に良い接し方をするのであれば、それは経営者が部下スタッフに対する場面でも考えられそうです。部下のミスを咎めるときにどうするか。部下の成功を認めて褒めるようなときにどうするか。いずれも社長さんの感情が表に出そうなところですが、どうするのが良いでしょうか。

感情をコントロールするといっても、かならずしも抑制するのが良いというわけではありません。もしかしたら、場合によって、心からの喜びや怒りや悲しみを相手に伝えることが有効な場面もあるかもしれませんから。ダメなケースを考えるといいのかもしれませんが、感情をコントロールできないことによって、相手にも良くない結果になり、自身や会社にとって良くない結果にもなることを避けたいです。

感情に任せて反応するのではなく、冷静に事象を受けとめて、どのように相手に接するのが良いか考えて、必要であれば厳しく接するし、必要であれば自分の感情を表現します。表情の作り方や声色のコントロールもうまく出来ればいいと思います。脊髄反射的に、感情にまかせて何かを言っているように部下に捉えられないことがポイントではないでしょうか。

落ち着いて一緒に成長を考える

部下の成長を願うのは当然のことですが、社長のそういう考えをスタッフが理解してくれるためにはなんらかのメッセージが必要です。それは言葉によるものだけではなく、制度設計や報酬の与え方なども考えられます。いろいろ考えたらいいのですが、接し方が感情まかせのキーキーした感じでは伝わらないと思います。冷静に、思慮深く考えて、一緒に従業員の成長を考えていけるようなスタンスが良いのではないかと思います。

社長は言葉をケチらない【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
今日は、零細企業の社長が社内のスタッフ向けに「言葉をケチってはいけない」ということについてお話をします。

言語化するのが面倒くさい?

ある社長さんは、従業員と実際に会ってお話をする機会が少ない事情があったために、チャットワークを社内コミュニケーションに活用しています。人数の少ない会社ですから、全体としてのグループチャットと、個人どうしのチャット、この2本だてで活用されています。もちろん、全体に共有すべきことと、他の人には知らせずにひとりひとりと個別のお話をするための使い分けです。

お話をうかがっていると、どうも、チャットで文字を打つのが面倒くさいようです。タイピングの速さは人並みよりちょっと遅いくらいで、そこはいいのですが、伝える文章を考えるのに時間がかかるようです。いわく「電話でしゃべって伝えるほうが速い」とのこと。でも、そもそも時間を合わせて話しにくい社内事情があって始めたことです。なんとか、面倒くさいという思いを振り払って続けていらっしゃるとのことです。

社長が言葉をケチらないということ

たしかに、慣れていなければ、アタマの中にあることを言語化するのは労力を使います。疲労感もあるかもしれません。面倒くさいと思うのも無理はありません。でも、この社長さん、それでも有用なことだから、自分が面倒くさがったりしないで続けるのだとおっしゃっています。月並みで申し訳ない表現になりますが、偉いと思います。

この社長さんが考えていることは、言葉をケチらないということです。面倒くさいので言葉を省略したくなることがあるけれども、それだと誤解を生む可能性が大きくなる。あるいは、勘違いで間違った指示の受け方をされてしまうかもしれない。それでは結果的に余計な手間や時間がかかるし、意味がない。そうならないように、ご自身は言葉を丁寧に考えて丁寧に書いているそうです。

言葉を上手に省略すると、表現は抽象的になります。抽象的になると全体像を共有するには良いのですが、受け手に誤解が生じる可能性が大きくなります。そうならないように、抽象的にまとめた表現と、具体的で詳細な表現は併用するのが良いです。一方で、零細企業の社長さんは忙しいことが多いから、なるべく時間を省略したくなって、言葉をケチってしまう可能性も高いです。

従業員の手間は会社にとってコストです。だからなるべくこれを軽減したいところですね。でも、社長の手間は、場合によっては投資と考えられるかもしれません。もちろん従業員の給料・賃金も投資になりえるのですが、経営者自身が自分の行動を投資とするのは、自分のことだから心がけしだいでできるはず。スタッフに何かを伝えるときに、言葉を惜しんでケチるのではなく、丁寧に言葉を紡いで、しっかり情報伝達をしましょう。もちろん、正しい日本語を使うようにしなくてはいけません。

出せないものは出せない【零細企業が人材を確保するために】

人事系コンサルタントの永江です。

零細企業の課題のひとつ、人材を確保するということのために、ちょっと注意をしてほしいこと。
それは、「出せないものは出せない」と割り切ることも必要ということです。

他社より高い給料設定にするかどうか

基本的に給料の設定は高すぎず、低すぎず、が良いです。具体的には、地域の同業他社相場より1割くらい高いのが理想的だと考えます。これはコンサルタントによって数値がちがっていて2割くらいという人もいらっしゃいます。

ただ、そこは会社としての財務力やキャッシュフローの状況がありますから、どうしてもそれ以上に出すのが難しいという場合もあると思います。ただ、相場より下げるようなことはしないほうが吉です。最低でも相場なみ。できればちょっと高いくらいが良いです。

「もっと欲しい」という要求には?

あまり多くあることではないと思うのですが、採用面接のときなどで「給料をもっと上げてほしい」と要求する人がまれにいらっしゃるようです。要求まではいかなくても、「もっと給料がよければ入社するんだけど」と態度に匂わすようなケースもあるそうです。それに応えようとするのかどうか、零細企業の社長さんがちょっと考えてしまうことかもしれません。

こういう要求や要望には応えないほうが良いです。前提として給料の金額設定は交渉対象にしないということがありますが、つまり、出せる金額のちょっと下の設定にして交渉によって上げられるようにするより、出せるいっぱいまでの変更不可な設定にするのが良いということです。

もちろん、入社後に昇給するのがいいので、あくまでも「入社時の金額としていっぱいいっぱい」です。入社後の活躍しだいで上がることがあるけども、入社時は「これ!」として、採用時の要求にはまったく応えなくてよいです。

お金よりも魅力になるものを考える

やっぱり給料などの待遇面では零細企業は不利なことが多いです。だから、お金に強く魅力を感じる人を採用などせずに、会社としての魅力を他のところに求めましょう。

零細企業が求人のときに魅力となるのは、事業の内容や仕事のしかた、社長のパーソナリティなどです。幸いにして、最近の若い人たちの職業選択の傾向としては、仕事そのものの魅力を重視する人たちも少なくないようです。それに社長の人となりがプラスされれば、適切な人材確保も可能です。お金よりも魅力になるものをちゃんと考えて採用活動をしていきましょう。

 

けっきょく、「出せないものは出せない」とする姿勢でいるためには、自信をもってアピールできる強みや魅力を把握しておくことが必要です。入社時の給料設定はガツンと決めたら動かさない。そして、それ以外に会社として持っている魅力を考えましょう。

人が先か、売上が先か【零細企業の人材確保】

人事系コンサルタントの永江です。
零細企業にとっての課題はいろいろあって、従業員を増やすタイミングもそのうちのひとつになることがあります。
会社の成長のために人を増やしたいけれども、売上が増えてくれないと人を増やす原資がない。でも、人が増えないとそもそも売上や利益を増やすための活動ができない。「鶏が先か卵が先か」みたいな話です。

人件費増加のインパクト

零細企業は会計規模が小さいですから、一人の従業員を増やすことによる費用へのインパクトは大きいです。将来の昇給も考えてあげようとするとけっこうアタマの痛い悩みにもなりえます。事業内容によってはパートタイムの雇用で様子を見ながらスタッフを増やすことも考えられますが、それができにくい業種もあるので悩ましいです。

利益が確保できてから人を増やす?

たとえば現在いる社員に残業をたくさんしてもらって利益を作り、その営業成績が安定してきた段階でならスタッフを増やせるかもしれません。その段階で新しい人を採用すれば、残業をたくさんしてくれていたスタッフにもラクをしてもらえるようになるかもしれません。

でも、新人さんが入ってくると教育のための労力が必要になることもあるし、営業成績的にどれくらいの余裕があれば人を入れられるのかという判斷もちょっと難しそうです。利益が確保できてから、営業成績が上の方で安定してから、それから人を増やすという考えだと、意外とそれが達成できずに、ヒィヒィ言い続けることになるかもしれませんよ。

先に人を増やすためには原資が必要

先に事業計画があって人員を増やしてから、それによって営業成績を上げていこうという考えのほうが理想的ではあると思います。実際、近年の「働き方」への世間の意識変化もあって、おそらくそのほうが健全にスタッフも活動してくれる可能性が高いです。ただ、これが出来るためには先に増えてしまう費用をどうするかということを考えなくてはいけません。人を増やすことは、とりあえず人件費が増えることは間違いありませんから。

人を増やせるかどうかというのは、財務状況やキャッシュフローの状況などに影響を受けます。会計=アカウンティングについてきちんと考えなければいけません。零細企業の社長さんの中には会計に弱くて税理士さん頼みになっている人も多いですが、税理士さんは人材確保のことまで考えて帳簿を見てはくれません。そこまで一緒に考えられるコンサルタントを見つけるか、あるいは自分がそこまで考えることに決めるか、そのどちらかになると思います。

小さな会社でも人事制度は必要【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
今日のお話は、小さな零細企業にも人事制度、とくに評価や教育に関する制度が必要なのかどうかという内容です。
結論を先にいえば、小さな会社にも人事制度はあったほうが良いです。

人事制度の本質は個人と組織の成長にある

組織というのは成長を目指すようにしないと持続すらしなくて衰退します。継続するためには成長を考えるのが良くて、そのために従業員の成長は不可欠です。人事制度というものは何のためにあるのかというと、スタッフ個人を成長させ、それによって会社そのものが成長するためです。これは規模の大小に関わらずいえることだと思います。

個人と組織が成長しさえすれば制度は不要ということにもなりそうですが、制度なしで運用するのはおそらくうまくいきません。なぜかというと、人は自分が思っているほどにちゃんとはしていなくて、社長が考える「成長のための施策」「評価する方法」というのも同じだからです。

評価や教育には納得感が必要

ちゃんと制度化していない方法でスタッフを評価しようとすると、どうしてもどこかに不満が出てきます。「自分は自分なりに頑張っているのに評価してもらえない」とか「社長は自分の何が足りないと思っているのか分からない」とか、そんな思いを持たれて良いことなんてありません。だから制度をつくっていく中で従業員に求める要件を明文化していき、何に頑張ればいいのかを分かるようにするんです。

明文化して分かりやすくするのは評価だけでなく教育についてもです。スタッフの成長に資するもの、なおかつ会社の利益につながるものであれば積極的に会社の費用として支出をし、労働の時間として評価してあげます。そうすれば「これが会社にとって、自分にとって必要なのだ」と分かるようになり、社長の方針や考えと部下の成長の方向性を整えられます。

会社の大小は関係ない

おそらく、大きな会社であればあるほど人事制度はしっかりと構築されていることでしょう。逆に小さな零細企業だとそこまで手が回らないという理由などから人事制度がないことが多いです。たしかに目の前の発注に対応して、営業もして、となれば忙しくてたいへんです。でも、忙しいからこそ、あるいは実は、小さな会社だからこそ人事関連のことは制度化したほうが良いのです。

あなたが零細企業の社長さんで、社員の成長が会社の成長につながるとお考えならば、ちょっと考えてみましょう。あなたは、指導や教育をすることが得意ですか?得意であればそれでいいです。でも、特定の分野で起業した人じゃなければ指導や教育はあまり得意ではないはずです。だから、そこは制度化して、制度が指導や教育をしてくれるようにしておくのです。

会社のルールは会社から従業員へのメッセージになりえます。こういう働き方をしてほしい、こういう行動を仕事の中でしてほしい、そういうメッセージがルールには込められます。このことは人事制度についても同様で、上手にやっている会社は制度の中で自然に社員が成長します。大きな会社に人事制度がちゃんとあるのは規模が大きいからではありません。それが上手な方法だと知っているから制度を作っているのです。その上手な方法を小さな会社だからといって使わないのはもったいない。あなたの会社でも、ぜひ、人事制度の構築を検討してみてください。