人材育成を考えるなら、まず現状の確認を

人材育成コンサルタントで
思考力トレーナーの永江です。

 人材育成を考える人は、その人物が将来にどうなってほしいかをイメージすると思います。そして、それを未来の成長像として考え、実現するように育成を進めます。

 会社で、あるいは学校で、人を育成するときに、まず最初にすると良いのは何でしょうか?

人材育成でやることを分解してみる

 まず、人材育成と一言でいっても、その中で発生するタスクが多いので分解してみます。真っ先に思い浮かぶのは直接的な指導の場面です。会社なら先輩からの指導、上司からの指導、研修やセミナーの実施などがあります。OJTも、OfJTもいろいろ、さらに分解できそうですね。

 それから、成長した先にどうなっていてほしいかという、未来像の設定も大切です。それが無いとOJTの方針も定まらないし、研修なんて実施のしようがありません。「やりさえすれば、何でもいい」という教育担当者をたまに見かけますが、あれはいけません。「どうなってほしいのか」をちゃんと定義して、それを本人たちにも伝えるほうがいいですね。

 また、教育や指導を行うにあたって、対象となるスタッフや社員の現状を把握しておくことも非常に重要です。そして、実はこれが最初にやるべきことだと私は考えて言います。その理由とは?

人材の現状把握を最初にやるとよい理由

 なぜ、現状の把握を最初にやるとよいのでしょうか。むしろ未来像の設定を先に組織としてやるべきだと言われるかもしれません。たしかに、未来にどう成長してほしいのかという事柄があり、そのイメージと現状とのギャップを、いま実施すべき施策で埋めようとするのが合理的に思えます。ただ、それだと、未来像が固定的になってしまう恐れがあるのです。

 未来にこうなっていてほしい!といっても、それは、誰にでも当てはまるものではないかもしれません。人によって、そのイメージはすごく遠くに感じられるかもしれません。遠すぎるイメージは学びのモチベーションを上げにくいことがあります。だから、現状がどうなのかと確認して把握する。そして、それに応じて、どうなっていてほしいのかという未来の姿を設定するのです。

 もちろん、大いなる目標として、ドーンと掲げて、全体で共有する理想像はあるかもしれません。でも、教育や指導を実際に有効なものにするには、その人の状況、レベルや能力にあわせて、ほどほどの高さに見るもののほうが効果的です。そのほうが「ここを目指すんだぞ!」と伝えやすいし、それを受けての取り組みがしやすいです。だから、ぜひ、人材育成に取り組む際には、まず、対象となる人のさまざまな状況の確認をして、把握するところから初めてください。

最初にやるけれども、それだけではない

 育成したい存在の現状把握を最初にすると良いのですが、それは、その最初のときだけではありません。他の事柄、つまり未来像の設定や、指導そのものの実施についても同じですが、これらは必ずPDCAサイクルに乗せて運用します。最初に確認したこと、決めたことをいつまでもずっとそのままにはしないように気をつけましょう。

 現状を把握をして、未来像を定め、そして有効な教育施策を考えて実行していく。それが一周まわったら、またその時点での現状を把握します。これは同じことを再びやるようで面倒に感じられるかもしれません。でも、要は、「指導したけでど、それでどうだった?」というフィードバックのようなものです。やったことがどうだったのかの確認は必要ですよね?だから、それをするのです。

 なにごともそうですが、特に人材育成は、ずっと継続するものとして考えるのがいいです。だから、本当の意味で「最初に」となるのは、PDCAサイクルのただ1回だけになるかもしれません。ただし、そこでひとつのマイルストーン的なポイントとして意識して、確認するとよいです。そういう意味では、常に「最初」に現状把握を置いておくと、考えやすいかもしれません。

お試しあれ。

 

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褒めることの重要性についてあらためて考えてみる

人事系コンサルタントの永江です。
今の私は「部下」という存在を直接に持っていないのですが、かつて会社に勤めて管理職だった時代には部下が居ました。そして、そこでは失敗をしたことも……。

褒めることなく、たまの失敗に厳しく叱る

ある部下スタッフに対してのこと。ふだんは淡々と業務をこなしていて、大きなミスもなく、今思えば本当によくできた部下でした。その部下が、あるときに、ちょっとしたミスをしてしまい、そのために他部署に迷惑をかけるということが起きました。自部署の中ですむことではなかったので問題が大きいと考え、私はその部下を叱りました。

まだまだ私も未熟でしたし、管理職としては本当に反省すべきですが、ふだんの淡々とこなしている素晴らしい仕事ぶりを褒めることがありませんでした。できて当然とでも思っていたのでしょうかね。そして、ちゃんとしっかり仕事をしていることを褒めることなく、叱るときには厳しくやってしまいました。

叱るなとは言わないが、それよりたくさん褒めよう

「叱るより、褒めよ」という言い方をよく耳します。今ならウェブ上の記事などで「目」にします。これはおそらくバランスをとるための言い方なのであって、まったく叱らなくてよいということはないのだろうと思っています。でも、私たちは、ふだんのしっかり行われた業務よりも、たった一回のミスにどうしても大きく反応してしまいます。そうすると生まれるのが、「ちっとも褒めないけど、小さなミスでもすぐに叱る上司」です。

仮に50対50のバランスでいいとしても、意識としては90対10くらいで褒めることを多くするようにしなければ、おそらく正しいバランスにはならないと思います。それは、先に述べたように、どうしてもミスに対してのほうが大きく反応してしまうからです。だから、もう、めんどうくさいと思われるほど、たくさん褒めるように意識を持っておくのが良いのではないでしょうか。

 


 



受益者の欲求とスポンサーの要望(講座やセミナー、学習塾にて)

思考力トレーナーの永江です。
私の仕事の中には、
サービスの提供を受けて価値を受け取る人と、お金を出すスポンサーがそれぞれ別であることがあります。

受益者とスポンサーが異なるケース

分かりやすいのは、学習塾での指導と社員研修です。学習塾で価値を受け取るのは生徒さんで、スポンサーは親御さんです。社員研修の場合はまれに参加者が自己負担する場合がありますが、基本的に講座に参加する社員さんが価値を受け取るけども、お金を出しているスポンサーは会社という法人です。このように、価値を受け取る受益者と、お金を出すスポンサーが別であると、それぞれの思惑にズレがあるのも珍しくありません。

塾の生徒が望むもの、親御さんが望むもの

中学生くらいになると塾に求めるものが親御さんと本人でズレることが減ってきます。でも、小学生の、特に低学年だとハッキリしていることが多いです。親御さんは学力とか学校の成績とか、そういう部分を求めます。当然といえば当然で、学習塾の社会的存在意義はおおむねそこにあると思います。でも、こどもはほとんどが勉強を好きではなくて、できれば避けたいと思っています。だから、こどもの欲求としては、親に納得してもらえる範囲で、あるいは親の目を盗んで、楽しく過ごしたい、勉強しなくてすむ過ごし方を求める、ということだったりします。

社員が望むものと、会社が求めるもの

塾の生徒と親御さんの考えや意識がちがうのは微笑ましくて、こちらとしては、なんとか楽しい雰囲気を感じてもらいながら勉強をするように誘導すれがいいのです。でも、意外とやっかいなのは社員研修。社員の望むものはいろいろで、会社側の要望とのズレは千差万別です。ズレの軸や方向性もバラバラだったりするとので、臨機応変にというのも大変です。単にサボりたいというものもあれば、非常に高い欲求をもっているものの会社の方針とズレているというもの、いろいろです。

 

基本的には、私は両立することを目指します。生徒も満足させつつ、親御さんにもご満足をしていただく。社員研修に参加したみんなが満足しつつ、実際に会社の利益に貢献できる人材を育成する。両立することは難しいこともあるけれども無理というわけではない。そう考えてこのお仕事をやっています。

 


 



社長の視点から、どこまで下に落とした伝達ができるか【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
社長は従業員とは違う視点を持っていて、それはより高いところから俯瞰で見る目のことになります。従業員がこの視点を持つことは極めて難しくて、通常はそのまま説明して分かってもらえるものではありません。だから、あるていどの規模をもった企業の場合は中間管理職があって、この人たちが社長の視点を現場スタッフの視点をつなぐ役割を担います。

零細企業は中間管理職が居ない

形式上のことを除いて、零細企業には「中間」管理職が居ないことが多いです。要らないことが多いというのが正解でしょうか。とにかく社長から末端のスタッフ、従業員までの距離が、物理的にも精神的に近いです。

だから社長から直接に指示を受けることがしょっちゅうだと考えられます。社長の考えを伝えるときも直接のことになるでしょう。基本的には、間に誰かを挟まずに、まさに社長の言葉で思いや指示を伝えることになります。

視点が違うから言葉が通じないことがある

直接の言葉で伝えるなら言いたいことがちゃんと伝わるかというとそうではありません。持っている視点が違ったり、ふだんから考えていることがちがったり、価値観がちがっていたりすると、言葉の定義やニュアンスすら異なり、そのまま伝わらないこともザラです。これは誰が悪いとかではなく、生きている世界が違うから仕方ないことだと思ってください。

下の経験しかないなら上の視点は持てない

視点の違いがあると言葉が通じないことが大いにあるわけですが、片方がもう一方の視点に切り替えることができたら通じるようになるはずです。ところが、被雇用者、つまり会社に雇われて働く従業員スタッフとしての経験しかない人に、経営の視点を持てというのはムリがあります。行ったことがない場所、写真やなにかでも見たことがない場所、そういう場所の風景は想像するしかないように、社長が持っている視点は現場スタッフにとって、せいぜい空想するのがせいいっぱいで不正確なのです。

逆に、経営者の視点を持っている社長が下の視点を持つことは可能でしょうか。これも決して簡単ではありませんが、どちらかというとこっちがまだ可能性があります。なぜならば、社長も現場の経験があるだろうし、かつては末端の従業員であったからです。(まったくそういう経験がない場合は別です)

伝える言葉としての視点を落とす

現場スタッフに社長の考えを伝えるときに、言葉が通じないことが多いと書きました。でも、そのままでいいわけはなく、できるだけ伝わるように工夫や努力をすることも大切です。考えや視点そのものを落とすと社長の役割を果たせなくなるから、伝えるときの言葉えらびとして、下の視点のためのものを考えます。社長が持っている視点での考えや方針や指示を、下の目線から見ても理解や納得ができるようにするわけです。この言葉えらびは作文技術としても簡単ではないかもしれません。でも、あなたが考えていることを有効にスタッフに伝えるために、必要な心構えとして考えていただけると嬉しいです。

 


 


何について成長してもらうかを特定する【零細企業の人材育成】

人材育成コンサルタントの永江です。

なぜ私が人材育成コンサルタントとして零細企業を対象としているのかというと、小さな会社の中には育成を担当する係になる人が居ないことが多いからです。また、多くの零細企業の社長さんは、一部の業種をのぞいては教育や育成について苦手とする人が多いということもあります。事業の内容としている分野にはものすごい能力をお持ちだけれども人を育てる経験には貧しい。そんな人が多いような気がします。

ということで、ここでは零細企業の人材育成を考えるときの「何について成長してもらうかを特定する」ということについて考えてみましょう。

最初に人材要件ありき

零細企業は採用を感がるときに人材要件をあまり綿密に考えないことが多いです。あなたの会社ではどうでしょうか。現場の仕事と社長が非常に近いので、わざわざ人材要件を明らかにしなくても「知っている」からそうなるのではないかと思います。「わざわざ考えなくても、どんな人材が我が社にふさわしいか分かっている」ということです。でも、ここに注意しなくていけない点があります。

この件についてかぎらず、人は自分のアタマのなかにあることをきちんと整頓して理解していないことが多いです。だからこそ、よく仕事の仕方の話として「見える化」という言葉が出てくるのです。自己分析の場面でも、討論をする場面での、あらゆるところで文字や図表などにして「見える化」をするのが良いです。そして、その「見える化」によって、社長さんのアタマのなかにある人材要件を明らかにしてください。それがスタッフの育成や教育を考えるスタートです。

人材要件の中で何を伸ばすか

人材要件が明らかになり、その要件にピッタリはまる人が採用できればよいですが、現実にはなかなか難しいと思います。また、当初は満足できていたけれども、日々の仕事の中で「もっと成長していほしい」と考えるようになることもあるはずです。そのときに考えることはどの能力を伸ばしてもらうのが優先されるかということです。

人材要件を明らかにしたら、おそらくそれは複数の項目になっているはずです。そのすべてについて成長してくれるのがいいのですが、まずは「今」どれを優先したいかを考えてください。優先順位は時期によってちがうかもしれないし、外的な要因によって変化する可能性もあります。だから決めたらぜったいに変更しないというものではなくて、「まず、今なら、どれ」と考えてください。

伸ばすものは1時期について1つ

従業員の教育を考えるときに、1つの時期にあれこれといくつもの能力やスキルを伸ばさせようとするのは良くないように思います。たとえば学校の勉強のように数学と英語を同時期に学ぶのはいいです。ただ、実際の現場で役立つスキルというのは、いったんひとつに絞って考えるのがいいです。それはなぜでしょうか。

零細企業の社員教育は、おそらくOJTになることが多いはず。毎日の仕事をしながらその中で何かについて今より良くなることを目指します。通常の仕事をしながらということは、いったんそこまでに覚えたり出来るようになったりしたことをアウトプットしながらということになりますが、これをやりながら新しく自分の成長のたかに意識を持つことは簡単ではないでしょう。ほとんどの場合で「あれもこれも」は失敗します。意識は少なめのことに向けさせて、「まず1つ」という感じで絞って指導すると成長の有無や度合いの確認もしやすいのでお勧めします。

待つことも社長の仕事

せっかちな社長さんは、従業員を教育するための取り組みを始めると、早く結果を欲しがります。気持ちは分かるのですが、内容によってはそう簡単ではない場合も少なくありません。たとえば家電品のような機械を操作するスキルは短時間で身につけられます。しかし、パソコンのタイピングのようなスキルは成長のための時間が非常に長くかかります。そういうときに急いでも無理があるということです。

あるいは同じことを身につけるにしても人によって必要な時間や期間が異なります。社長が思っていたより早いこともあれば遅いこともあります。私は、社長が持つべき覚悟のひとつに、この「成長を待つ」ということも含まれると考えています。どんな人間もあるていどの成長はするのだけれど、それには一定の時間が必要。待つことも社長の仕事だと考えて、慌てることなく、成長を促す施策を実行しましょう。

業務効率を改善する「手戻り」のチェック

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思考力トレーナーで、人材育成に関するコンサルタントをやっている永江です。

前職で人事部長をやっていたことを活かし、
人事に特化した経営コンサルタント業務をやっています。

その中で、ときどき、業務効率についての相談を受けることがあります。

話の端緒としては
「部下の手際が悪い」 とか
「もっと手早く仕事をこなせるようになってほしい」 といったように
「教育・育成」に視点を置いた内容だったりします。

もちろん、部下と呼ばれるその人が成長して、
仕事が早くなってくれることも必要なのですが、
話を聞いていると、必ずしもそればかりではないことがあります。

 

手戻りという言葉があります。

仕事全般について使われる場面で考えると、
ある業務を行ったあとに、なんらかの理由でそれがやり直しになることです。
仕事がまた手に戻ってくるから手戻りなんですね。

先のご相談の例でいうと、
その部下の仕事が遅い状況として、
この手戻り、つまり、仕事のやり直しが多いということです。

やり直しとなることが多いから、結果として完了するまでに時間がかかる。

 

そして、さらに話を聞いてみると、
どうやら、上司からの指示がうまくその真意まで伝わっていないようでした。
そのために、
「そういうつもりで言ったんじゃない」 とか
「そこはもうちょっと、こうしてほしかった」 となっているのです。

「このロゴは青系統で作って」と指示したけど、
薄いパステル調の青がよかった。
それなのに部下は濃い青を使ってきた。

「グラフを使って報告書を作って」と指示したけど、
自分が思っていたのは折れ線グラフで、
部下が作った棒グラフではイメージが違う。

ちょっと極端な例ですが、そんな感じです。

 

手戻りが多くなると業務効率が悪くなります。
特定の人についてそれが多いとなれば、
その人の評価が下がるのは仕方ないのかもしれません。

けれども、
上の例を読んでいただいて気づいていただけると思いますが、
そもそも指示が不十分なために手戻りが多いのかもしれません。

他の人ならなんとなく察することができるとしても
指示を出す側の人間がそれを良しとしてはいけないのではないでしょうか。

 

しっかりした指示を出し、
丁寧なコミュニケーションを心がけ、
業務効率低下の原因となる手戻りを減らすように考えてみましょう。

 

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人事に特化した経営コンサルタント業務
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「人」にフォーカスして業務改善が考えられます。
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