OJTのときに考えるOffJT的な考え方【零細企業の人材育成】

人事系コンサルタントの永江です。
小さな会社では、OffJTを行うのが難しくて、育成はOJTのみということも珍しくありません。

OJTとOffJT

OJTとは、On the Job Training の頭文字をとったもので、仕事の現場で行われる訓練=トレーニングのことです。まだ習熟の途中であっても実際にやるべき業務に従事させ、それによって知識や技術を身につけさせます。一方のOffJTとは、Off the Job Training の略で、現場の業務とは別の機会をもうけて教育や訓練を行います。

OJTとOffJTは、どちらが良いというものではありません。理想的な運用としては、その場、そのとき、対象となる従業員のスキルや将来性など、いろいろなことを複合的に考えて適切な手法を使い分けます。比較的に失敗のゆるされる業務ならいきなりOJTで指導するのもアリですが、絶対に失敗してはいけない業務はOffJTでよく練習や訓練をしてから本番に臨みます。また、現場から離れた環境で研修を行うことによって知識面での学習効果を高めるという狙いでOffJTを行うこともあります。

OJTに頼りがちになるときの注意

どちらのトレーニング手法もそれぞれに有効性があるのですが、小さな会社はなかなかOffJTの機会を業務時間中に設定出来ないことが多いです。そのため指導や教育はOJTで行われることが多く、それ自体は良くないということはありません。ただ、OJTを行うときには注意があって、そのひとつが、指導内容の体系的な考えが忘れ去られがちということです。

物事を知って、理解して、練習して、できるようになって、という習熟には、その効率のために体系立てられた理論があったほうが良いです。そして、それにもとづいて効率的な順番も考えられると良いです。でも、現場の仕事というのはその順番どおりに発生するとは限りません。そして、効率の良くないステップでトレーニングが行われてしまうわけです。

体系的にOJTを考える

訓練は効率よく行われるのがよく、そのほうが対象のスタッフは早く成長します。スタッフが早く成長すればそれは会社の利益になるからそれを目指すために、効率よい訓練をするというのは当然といえば当然ですね。実際に現場で発生する業務によって訓練をするわけですが、ただ漫然と仕事を教えるよりも指導内容の体系というものは考えておいたほうが良いでしょう。

指導する内容を体系立てて考えておくということは、身につけてほしい業務の内容を体系立てて整理しておくということでもあります。業務や作業の内容を分類して、必要な知識やスキルも分類して、行き当たりばったりにならないように整理整頓しておきます。実際の現場では理想的な順番で指導できないことも多いと思いますが、教育係にあたる人が体系の意識を持っているのといないのとではちょっとした指導にも違いが出ます。そのとおりにならなくてもいいので、体系的にOJTを考えておくことをお勧めします。

 


 



社長主導の案件では、事前に伝えることが抜けがちになる

人事系コンサルタントの永江です。
小さな会社でも、社長が主導となって進める案件がもちろんあります。
そして、大きな会社とちがって、社長がたったひとりで進めることも珍しくありません。

社長がたったひとりで進める案件

社長主導の案件といっても大企業であれば他に複数の人が関わります。でも、零細企業だと、社長がたったひとりで進める案件があるわけです。たとえば、新しい顧客を獲得する営業があって、関心をもってもらえて、そして契約にいたるまでの進行など。これにかかわるすべてのことを社長がひとりで行います。初期の営業、訪問しての説明、契約の詳細の検討から、実際の契約締結まで。すべてです。

従業員にとっては突然に降ってくる情報

さて、いよいよ契約が結ばれて取引が開始。会社どうしのやりとりがしばしば発生したり、社内の現場で作業が発生したりします。そのとき、いざ、まさにそのときになってようやく新規契約についてスタッフが知らされるというケースをときどき耳にします。従業員スタッフにしたら突然のことで、それまでに抱えていた「つもり」をジャマされることにもなります。もう少しやさしい言い方にしたとしても、驚かされるということはあるでしょう。あまり好ましいことではありません。

社長の考えとしては、常に部下スタッフの働きを見ていて、新しい取引が始まったとしても現場に特に問題はないとなっているのかもしれません。でも、それは社長のアタマの中にだけあって、突然に言われる従業員にとっては、この、突然に言われることそのものが不快の種になるのです。

事前に情報を伝えることを怠らない

社長がたったひとりで進める案件の場合でも、本当に、それこそ墓場まで持っていくくらいのレベルで社長オンリーの案件で済ませられるならかまいません。でも、会社として行う活動で、そういうことは滅多にないですよね。だから、ちゃんと、関係が発生しそうなスタッフには事前にゆるやかに伝えておきましょう。

案件の内容によっては機密として伝えられないこともあると思います。そういうときには、いわゆるオブラートに包んだような言い方を考えましょう。「詳しくは言えないけど、こんど手伝ってもらいたい案件が進行していて、話がまとまったら言うよ。」くらいの言い方でもかまわないと思います。青天の霹靂のように突然であることを避け、社長のアタマの中がブラックボックスだと思われないようにします。

 

私自身がいろいろな人からやられることがあって気になるのですが、「言ってなかったっけ?」とか「言ったつもりだったんだ。」という場合もあります。言ったつもりになっていたから悪気はないのでしょうね。でも、どこか初期の段階で「言っていないはず」と思える場面があるはずで、そのときにすぐに、「やわらかく伝えておく」ことをチェックリストに載せましょう。情報の伝達はこれからの時代のキーポイントのひとつです。

 


 



人の心や感性に気を配る【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
経営者が自然に陥りがちな思考について、その注意点。

日常の経営は左脳的になりがち

経営者の思考は左脳的になりがちです。未来のことをイメージしたりするのは右脳的な活動なのですが、日々の経営はきわめて左脳的。収支を考えたり、キャッシュフローを考えたりする数字の計算や、経営計画にもとづいたプロジェクトやタスクの管理など、左の脳みそが大活躍です。小さな会社であれば社長はそういうことを日常的に考えていますから、頭の使い方そのものがしだいに左脳的になっていきます。

スタッフは右脳的な感性を持っている

もちろん経営者だって右脳的な感性を持っているのですが、上述のような傾向が出てしまう。それに対して従業員スタッフは、その人の中の割合として社長よりも右脳的な思考が強くなります。本来はこちらがヒトとして一般的なのかもしれませんね。仕事をしながらでも、右脳的な感性や感情、心の部分がバンバン出てきます。

社長に気をつけてほしいのは、その、スタッフがバンバン発揮してしまう感性や感情の部分も大切にするということです。良いことだとは思いませんが、どうしても感情が仕事に影響を及ぼします。イライラしていたら仕事の質が落ちるかもしれません。他のことが気になって仕事に集中できずにミスをするかもしれません。どうしても仕事に影響してしまう要素として心や感性というものを持っているのです。

人の心や感性に気を配る

考えてみたら従業員だけではなく、社長さんはたくさんの他人を交流をします。そしてそのすべての人が心や感性を持っています。社長がいくら左脳的に理性で物事を考えても行動をしても、相手は感情をもった人間です。その人達の心や感性に気を配るのは、ある意味ではマナーだともいえるかもしれません。

そして、従業員スタッフは会社にとっての財産です。その財産を大切に考えるなら、心や感性、感情の部分も大切にしなければいけません。経営者の日常は左脳的なアタマの使い方になりがちなので、バランスをとるために、人の心や感性に気を配ることを強めに意識することをお勧めいたします。

 


 



社長が評価できる範囲は限定的である【零細企業の人事】

人材育成が得意な人事系コンサルタントの永江です。
思考力トレーナーでもあります。

会社の規模にかかわらず人事評価はしっかりしたい

部下スタッフに対しての評価をどうすると良いのかという点において、小さな会社だから曖昧でよいなんてことはありません。会社の規模にかかわらず納得感を得られる評価をすべきです。そして、その評価を伝えるべきです。小さな会社だから、忙しくて時間がないから、というのはすべて言い訳にすぎません。経営者は、しっかりと従業員を評価すべきです。

ふわっとした評価の仕方は問題がある

零細企業の場合は、社長とスタッフの距離が近くなります。場合によっては仕事をしている間ずっと一緒に居ることもあります。そのうえで人事評価をして査定となって報酬の変更があったりします。その際に、評価項目をきちんと定めておくのが理想ですが、なかなかそうはいかずに、あいまいなままフワッと人物の全体を評価するケースもよく見られます。これはあまり良くないです。

なぜ項目を定めておく必要があるかというと、親しい関係での付き合いによって、仕事以外の部分を評価に加えてしまうからです。たとえば、なんとなく声が自分の好みだから、全体的に良い評価をしてしまう。イメージのよくない地域の出身だったから評価を下げてしまう。そんなことあるかと思いそうなことを、人は無意識にやってしまうのです。この点にはよく注意をしなくてはいけません。

限定的であるはずの「社長からの評価」

評価項目を定めるということは、評価する事柄を明確にすることです。一方で、「評価の対象としないもの」を明確にすることでもあります。項目が具体的に定まっていれば、そこに並んだ項目以外で評価することはなくなります。

そもそも経営者がスタッフを見て、仕事に関することで評価できることは限定的です。なぜなら、仕事の間の付き合いしか基本的にはないからです。業務時間外に食事に行ったりするかもしれませんが、そこでもスタッフは完全な素の姿を見せるわけではありません。やはり上司である社長に対しては遠慮もします。だから、仕事に関することしか見えないし、評価できないものなのです。

評価項目を設定していないと、仕事と関係ないことに評価が引っ張られるおそれがある。社長が評価できることはそもそも限定的なので、そこを肝に銘じて評価は項目の設定からしっかり行う。これが零細企業においても必要です。

 


 



言葉の不足が命取りになる?【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
物事には「過不足なく」という言い方でそれを推奨するこがありますが、今回は、言葉が不足したときの問題についてです。

他人の考えていることなど分からない

先にこういうことを書くと身も蓋もないのですが、誰しも、他人が考えていることなんか分かりません。分からないから言葉を使ってコミュニケートするのだし、ときには質問をしたり、確認をしたりしながら相手の意向を受け取ります。

自分が他人の考えを分かるわけないのだから、相手からしても同じです。相手はあなたの考えを知りません。付き合いが長くなるとなんとなくで通じそうに感じたりしますが、それでも完全なわけはないし、思っている以上に自分の考えは相手に伝わっていない可能性があります。

分かってもらうためには言葉をつかう

人間社会で、自分の考えや思ったことを伝えるためには言葉を中心としたコミュニケーションの手法を使います。図や写真などで伝えることもありますが、ベースになるのは言葉です。だから、言葉をつむいで文章にするときに、ちゃんと伝わるかどうかを考える必要があります。

たったひとつの言葉で思いが伝わることもあります。ただし、それは前後の関係性や経緯があってのことであったり、しっかりと意味をもったビジュアル要素があったりするからだと思います。言葉の単体たったひとつで伝わることは少ないです。だから、そもそも言葉は、不足する可能性があるものなのです。

言葉が不足すると誤解や勘違いが生まれる

言葉が少ない状態は、受け手からすると理解のしかたに多様性というか、相手が本当に伝えたいこととは違う意味で受け取れる可能性のようなものを生み出してしまいます。
「A社あての見積書をつくっておいて」
という指示を部下に出したとして、部下は、パソコンの中のデータとして作っておけばいいと思うかもしれないし、プリントアウトしておくところまでやれということかと考えるかもしれないし、印刷して封筒に入れるところまでやるべきなのだと思うかもしれません。しかも、先へ先へとやっておけばより良いようにも思えますが、パソコンのデータとしての段階で指示者が確認をしたいのかもしれません。それは言わなければ分かりません。だから、「言わなくても分かるだろ」ではなく、ちゃんと具体的で誤解のない指示を出すべきなのです。

誤解や勘違いで生まれることの大小

紙に印刷するかどうかレベルなら、一枚の紙を無駄にするかどうかというていどです。でも、誤解や勘違いによって生まれる事柄の大小はどんなものがあるか分かりません。言葉が足りない人は、事柄が大きかろうが小さかろうが同じように言葉の不足を発生させるからです。

当然ですが、事柄が大きい場合に勘違いがあると、会社にとっての損失や、取引先にかける迷惑度合いも大きくなる可能性があります。場合によってはそれが会社にとっての命取りになるかもしれません。そこまでは大げさだとしても、部下との関係性や、業務の進行などに大きな影響をおよぼすことも考えられなくはありません。誤解や勘違いを生じさせないようなコミュニケーションはとても重要なことなのです。

 

忙しいとき、どうしても言葉を端折りがちになる人がいます。気持ちは分かります。短い言葉でスパッと方向性示すこともリーダーとして必要です。しかし、十分に丁寧な言葉を補って誤解なく考えや意図を伝えることも、社長さんが従業員に接するすべての機会で気をつけなくていけないことなのではないかと思います。言葉の不足があなたの会社にとっての命取りにならないように気をつけましょう。

 


 



仕事が嫌ならやめればいいし……【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
小さな会社を経営していると、一人の人の言動が会社全体に影響を及ぼすことがあります。良い影響なら大歓迎ですが、それが悪い影響だと困ります。今回は、悪い影響を及ぼす人のお話です。

仕事がイヤだ嫌だという人

ときどきいらっしゃいますね。仕事の愚痴ばかり言っている人。仕事がイヤだとずっと言っている人。誰にだって嫌だと思うことはあるし、それが仕事の中にあることも珍しくないです。私の仕事の中にも、できれば避けたいと思うことはあります。でも、仕事自体がイヤだという人もいて、そういう人は、もう、仕事をやめればいいのに、と思います。

「いや、そういうわけにもいかない」「生きていくために仕事はしなくちゃいけないし」と返ってきそうですね。でも、何もいまやっている仕事だけが仕事じゃありません。世の中には、他にもたくさん仕事があります。イヤじゃない仕事を探せばいいんです。で、他の仕事を探すことを勧めたりしても、「そんな簡単に次の仕事は見つからないよ」と返ってきます。

苦労が美徳? 仕事を楽しんではいけない?

もしかしたら、そういう人の中には、「苦労することが美徳」と思っている人がいるのかもしれません。苦労することは良いことであり、「嫌だと思う仕事も頑張ってやっている自分はえらい」と考えている。そして、その自己アピールを周囲にしている。ものすごく自己肯定感の低い人の行動ですね。

あるいは、仕事というものを楽しむことは良くないと考えているかもしれません。仕事は苦労するものであって、楽しいというのは遊びであり、仕事に楽しいという感情を持ち込んではいけないという思い。大間違いですけどね。仕事は楽しんでいいし、楽しみながらだろうがなんだろうが、誰かの役に立てば報酬がいただけるのが仕事です。楽しいと思えるならそれに越したことはありません。

やめると言う人ほどやめない

会社に勤めていて、積極的に退職しようとする人は、会社にとってはけっこう重要度の高い人材だということがあります。けっこうあります。珍しくありません。一方で、「やめる」「やめたい」と言っている人が、言うほどやめないということもよく耳にします。やめたいならすぐにやめればいいのに、自分の退職を交換条件のようにして上司につきつける人もいるそうです。

やめるという言う人ほどやめないとすれば、これは上司からすると面倒です。おそらく放っておいてもいいのですが、そもそもパフォーマンスが低い可能性が高いです。あるいは、言動によって周囲に悪い影響を与えている可能性も高い。だから、本当は、「やめる」と言い出したら、「わかった。退職届を書いてくれ。」と言って書類を渡すのがいちばんです。そしてとっととやめていただく。そこで、「いや、すぐにやめるとまでは……」と言いながら、けっきょくやめないから困りものなのです。

「嫌だ」「やめる」の連発は指導対象

仕事の愚痴や、嫌であるということ、「やめる」や「やめたい」という発言を繰り返すことは職場の雰囲気を悪くします。だから、その人がどのていどの能力を発揮しているのかに関わらず指導の対象にしましょう。理由は「周囲への悪影響が懸念される」くらいでよいです。そして、指導をしても繰り返されるなら罰則を適用してもいいと思います。

もちろん、一方的に叱るだけというのも好ましくはありません。ちゃんと相手の言い分を聴くということも上司の心構えとして必要です。でも、ちゃんと聴くということを実行しつつも、その言動が指導の対象であるという認識は持っていないといけません。特に小さな会社で仕事への不満をまわりに吹聴するのは問題行動です。仮に本当の意味での不満があるなら、上司や経営者など、ちゃんとした筋を通して主張すべきです。それができない人を大事に扱う必要はありません。

 


 


言葉のニュアンスが人によるからこそ、定義を意識して伝える【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
幅広く、お子様から職業人のみなさんまで、人材育成のためのお仕事をさせていただいています。

先日、ある企業の社長さんが「一生懸命に話しているつもりなのに、どうも自分の意識や考えが伝わっていないように思う。」とおっしゃっていました。私はその社長さんが会社でどういうことをおっしゃっているのか存じていないのすが、「ひょっとしたら」ということでひとつのアドバイスをさせていただきました。

同じ言葉でも受け取るニュアンスが人によって異なる

それは、同じ言葉を使ったとしても、その言葉に対して受け取るニュアンスが人によって異なる場合がある、ということです。

たとえば、「うちの会社、ピンチだね。」とAさんが言ったとします。Bさんはそれを聞いて、「会社が倒産の危機!どうにかしなきゃ!」と慌てふためくかもしれません。でも、実はAさんが言った「ピンチ」とは、今月の営業成績がライバル会社に負ける可能性が大きいということでした。だから、倒産するほどの危機ではないけれど、「ピンチ」という言葉を使ったということ。

同じ「ピンチ」という言葉を使っているのですが、どのていどの危機が訪れているのか、言葉から受け取る二人のニュアンスが異なるので理解や意識にズレが生じてしまっています。こういうふうに、言葉のニュアンスのズレが意識のズレになってしまうことは意外と多いように思います。

言葉で伝えるなら言葉を大切に

社長がスタッフになにかのメッセージを伝える方法はいろいろあります。実は就業規則などのルールによってもメッセージを伝えられます。でも、ふだん、一番に多いのはやっぱり言葉によるメッセージだと思います。会社の理念、会社をとりまく状況、従業員にどうあってほしいか、などなど、いろいろなメッセージを言葉で発します。

我々、人間は、メッセージを言葉で伝えるとき、同じ言語体系の人どうしならきちんと伝わると勘違いをしがちです。分かってもらえないときにもどかしくて「なぜ分かってくれないの!?」と思うのは、分かってもらえるものだと思いこんでいるからです。でも、それがなかなかそうはいかないから言葉を丁寧にあつかい、ニュアンスレベルで整えていく必要があります。

社長からのメッセージでは言葉の定義を共有する

業界によって、会社によって、文化がちがうので、そこも言葉のニュアンスがズレてしまう要因になります。他業界から転職した人が、ある言葉の意味が思っていたのと違ってとまどうという話はしばしば聞きます。個人レベルでは生活環境などのプライベートな要因も言葉に持つイメージに影響するでしょう。

だから、社長からのメッセージは、その言葉のニュアンスが聞いているスタッフと同じかどうか注意しましょう。できれば、当たり前のように使っている言葉こそ、その定義をしっかり明確にして、定義や意味を共有して、それからメッセージ中の言葉として使ってください。ちょっと面倒な作業になるかもしれませんが、勘違いしたまま進むより良いと思います。

 


 


無駄を無駄だとスタッフは気づかないかもしれない【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
前回の投稿では、「人が足りない!」と感じたときに、もしかしたら仕事の無駄を削ったら人材不足が解消するかもしれない、というようなお話をさせていただきました。では、この、仕事の中にある無駄を従業員=スタッフは分かっているのでしょうか。

みんな一生懸命に働いている

不真面目で怠惰なスタッフが居る場合は実は話が簡単です。その人に指導をし、場合によっては改善が見られないときに辞めてもらうという選択ができます。でも、従業員の一人ひとりが真面目にやっている、あるいは少なくとも個々人の意識としては一生懸命であるときに、無駄があったとしても気づきにくいです。

仮に手待ちの時間帯があってその間の生産がないとします。その場合も、1日とか1週間という全体で真面目に働いているという思いがあれば、やっぱり「自分は一生懸命に真面目にやっている」と感じていると思います。このときの感じ方は、「一生懸命にやっているから無駄などあるはずがない」というものです。これは、無駄があるということがすなわち、自分が悪いことをしているという感覚になるからかもしれませんね。

無駄の把握は淡々と、人を悪者にせずに

「無駄」という言葉に対して、その対象となる人を悪く言うという感覚を持ってしまうのは仕方のないことだと思います。でも、無駄の把握はやっぱり必要です。だから、「あなたの仕事にこういう無駄がある」という指摘にならないように注意するのが良いです。

たとえば、「時間あたりの生産性を向上させたい」とか「手待ち時間に価値をつくりたい」とか、なにがしかポジティブな表現を考えます。具体的な言い方については、企業や現場によって変わるから、上記のものはあくまでも一例です。無駄の把握は淡々と客観的に行うべきであり、そこで人が悪者にならないような配慮をしてみましょう。

 

人は、なにか評価の類の言葉に対して感情をどうしても持ってしまいます。こっちが非感情的に、論理的に、客観的にと思っていても、相手がそうとは限りません。むしろ感情を排除するのはなかなかに難しいです。だから、そのことをアタマに置いておいて、どういう伝え方、表現の仕方がよいか考えることが大切なのではないでしょうか。

 


 


人が足りないのか、仕事に無駄があるのか【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
北陸地方は人手不足が顕著で、有効求人倍率も全国平均を上回っているそうです。企業の人事担当さんのニーズとしても人材育成よりも、まず採用を優先するという傾向があるそうです。

人員不足を感じるとき

今いるスタッフで10の仕事をしているとして、そこにプラス2の仕事のオファーがあったら、1.2倍くらいなら残業でなんとかしようとするかもしれません。でも、プラス5、プラス7と増えていきそうに思えたら人員の補充、つまり採用を考えると思います。単純に、人数によってまかなえる仕事量に対して、受注の見込みが大きくなってきたら人員の補充を考えるでしょう。

あるいは、事業の拡大を想定したら、とうぜん今のスタッフでは不足するでしょうから、育成期間のことも考えてあらかじめ人員を増やしておくということも考えられます。この場合は、当面の人員不足というより、未来においては今のままでは不足するという予測からくる対応です。

本当に人が不足しているのか、仕事に無駄はないのか

人員の不足を感じたときに、人材の採用で対応しようとするのは自然なことです。でも、どんなに急いでも人員の充足には週単位、場合によっては月単位の期間が必要です。どうせそれくらいの時間がかかるのなら、その間に、仕事に無駄はないのかという検証をしてみることをお勧めします。

現場でいつも頑張っている自覚のある人は、仕事に無駄がないかと問われると「そんなことありません!」と強く反発するかもしれません。でも、仕事の無駄というのは、その仕事の近くにいる人の「感覚」では測りづらいものなのです。自分自身の感覚では一生懸命にやっているつもりだから無駄なんて考えられない。こういう考えは当然といえば当然です。

仕事の効率性は客観的に数値化する

生産性や効率性については、経営分析の中でいろいろな指標が登場します。そのいずれもが、客観的であり数値化された指標を活用するよう教えてくれます。一人あたりの付加価値の創造度合いや、チーム単位での生産能力など、単位やカテゴリ設定でいろいろ考えられます。

経営の中で人に対する部分は数値で表せない要素もありますが、こと仕事に無駄がないかどうかという部分は、逆にドライに客観的にし考えたほうが良いです。そうしないと、「がんばっているよ!」という非常に感覚的な一言にじゃまをされて正しい状況判断ができません。数値化をする。そのために客観的な方法をとる。

 

仕事の効率や生産性を明確にすることは、最終的には一人ひとりの従業員がゆとりを持って働くことにもつなげられます。別に効率の悪さをあげつらって糾弾するのが目的ではありません。新しい人を採用するとそれなりに現場にも負荷がかかるし、もしかしたら会社全体の人件費割当を考えると既存スタッフの給料にも悪い影響があるかもしれません。

採用を止めるのがいいとまではいえませんが、採用を考えるときに、同時に、仕事の無駄についてもちょっと考えてみてはいかがでしょうか。

「適材適所」にこだわりすぎない【零細企業の人事】

人事系コンサルタントの永江です。
「適材適所」というと基本的にはそれは良いことで、そうするのが良いとされています。けれども、なにごともこだわりすぎると良くないもので、「適材適所」ということもこだわりすぎは良くありません。

部門の設定はあるていど以上の規模むけ

小さな会社であっても役割分担があり、それは、たとえば事務系の仕事であったり販売の仕事であったり、企画、製造、などなど、さまざまです。ただ、会社の中にある役割としての部門、特にその名称をイメージするときに、もともとのそれは大企業むけの設定であり、大企業とは言わないまでもあるていど以上の規模をもった会社に向いているものだと思います。

社長が技術屋さんである零細企業の場合に、営業を担当してくれる人を雇い入れるとします。この人には「営業部長」などという肩書を与えて営業をすべて任せたりするのですが、人数が少ないから営業だけをやっていればいいというわけにはいきません。社長と一緒に企画や製造に関わってもらうかもしれないですし、年度末には事務系の仕事を手伝ってもらうかもしれません。会社の中に必要な機能が部門の設定になっているはずなのですが、必要な機能ごとに部門を設定できるのは全体の規模があってのことなのです。

少人数における適材適所

チームのメンバー数が少ないとき、適材適所といっても限界があります。そのチームの中では比較的に向いているということがあっても、社会全体でみたらそれほど高い能力ではないこともあります。「うちではいちばん数字に強い」という人に経理をやってもらったらミスばかりで、税理士さんに叱られたという話も聞いたことがあります。この場合は、おそらく経理業務を外注したほうが良かったと思います。

また、企業をとりまく環境は常に流動的であり、会社が組織として発揮すべき機能はそのときどきでボリュームが変化します。たとえば販売にグッとチカラを入れたいときには、メンバー全員でそれに当たるのが良いかもしれません。そうすると、事務員として雇用した人にもなんらかの販売的な行動をお願いすることになって「私は事務ですから。」などとは言わせていられないかもしれません。

少人数のチームや組織だと、適材適所といっても社内でそれが賄えないことも多いです。だから、経理業務の例のように外注することを選択肢とするのと同時に、そもそも理想的な適材適所なんて組織内でできないことが多いという前提を覚悟しておくのも必要ではないかと考えます。

役割の自覚を限定化させない

そのときどきでやってもらう仕事や業務に変化がありえるので、部下に対しては、「あなたの仕事はこれね」と限定的には伝えないほうが良いです。「あなたは営業担当ね」と伝えた部下に、業務の関係上でどうしても急ぎの製造を手伝ってもらったら、「私は営業なんだけどな……」と心のどこかに不満を持ってしまう可能性があります。役割の自覚が「営業」という限定されたものになっているからです。仮に労働時間全体に変化がないとしても、「余計な仕事をやらされた」と感じるからです。時間の負荷は変わらないとしても、脳内の意識としてはボリュームが増えています。

だから、零細企業においてスタッフや従業員に持ってもらう「役割の自覚」は、たとえば「新旧顧客のバランスをとりつつ、我が社のサービスで喜んでくれる人を増やす」というように抽象的にするのが良いかもしれません。そのうえで、「いま何をしたらいいか」については社長の方針を明確に示して、常に考えながらやっていくよう促すと良いです。

 

適材適所そのものは悪いことではありません。けれども、部門の考えが一定以上の規模をもった組織むけであり、小さな組織では適材適所そのものが難しい場合もあります。無駄にマイナスな感情を従業員が持ってしまうケースも考えられるので、あまりこだわりすぎないようにしましょう。